夫婦で登山を始めて約2年。
アクセスしやすい六甲山系から活動を始め、滋賀県や三重県、大山や剣山などにも足を運んで、200以上もの山に登頂してきました。

高所恐怖症でビビりな私は、山の情報をしっかりと調べたうえで「問題ない」と判断してから登山計画を立てるのですが、登山を始めて間もないころ、夫の希望で泣く泣く馬の背にチャレンジしたことがあります。

今日は1年半前を振り返って、今までで一番怖かった須磨アルプスの「馬の背」についてまとめてみました。
多くの人にとっては「楽しすぎる細尾根歩き」だと思いますが、中にはこんな奴もいるんだって事を知ってもらえると嬉しいです(笑)
須磨アルプスの名勝「馬の背」とは?

六甲山系の西端に位置する須磨アルプスは六甲全山縦走路でもあり、海の絶景・山の絶景を同時に楽しめるとあってハイカーに人気のコースです。
大阪から電車で1時間、駅から登山口まで数分の距離と、アクセスがしやすいのも人気の理由ですね。
横尾山の南側斜面が岩肌露出していて、東山とを結ぶ細尾根が須磨アルプスの名勝地「馬の背」として知られています。
風化した花崗岩で足元は滑りやすく、道幅は約70cm、長さ約20mぐらいと言われています。
強風時は特に注意が必要ですが、スリルと絶景が楽しめる人気のスポットとなっています。
須磨アルプス|コースガイド

【スタート】山陽電車 須磨浦公園駅
→ 鉢伏山(はちぶせやま)246m
→ 旗振山(はたふりやま)253m
→ 鉄枴山(てっかいさん)234m
→ 高倉台(住宅地を歩く)
→ 栂尾山(とがおやま)274m
→ 横尾山(よこおさん)312m
→ 馬の背
→ 東山(ひがしやま) 253m
【ゴール】山陽電車 市営地下鉄 板宿駅 又は 市営地下鉄 妙法寺駅
板宿駅がゴールの場合
距離:約8㎞
時間:約4時間(休憩を含まない)
妙法寺駅がゴールの場合
距離:約7.1㎞
時間:3時間半(休憩を含まない)
マップ
アクセス
【行き】
大阪梅田駅→新開地→須磨浦公園駅(約1時間)
運賃:730円
【帰り】
板宿駅→新開地→大阪梅田駅(約44分)
運賃:650円
妙法寺駅→三宮→神戸三宮→大阪梅田駅(約52分)
運賃:640円
山行日記|馬の背にチャレンジ!
夫が行きたいというので調べてみたら、過去には滑落死亡事故もあった危険な場所だと判明・・・。YouTubeを見たり多くの活動日記を見たりして、「私には歩けそうにない」と判断。
しかし夫は、周囲の人間の「全然大丈夫やって!」という言葉ばかりを信用して、無理だと訴える嫁の言葉には耳を貸しませんでした。
という事で、「行ってみてダメなら撤退する」という約束の元、須磨浦公園駅に到着。

大阪から1時間。
駅前で団体さんが集合写真を撮っていました。

駅から歩いて数分。
海を見ながらテクテク歩くと

登山口に到着。
ここから階段が続きます。
途中ベンチなどもあり、休憩しながらゆっくり登りました。


駅から30分ほどで鉢伏山に到着。
桜の木がたくさんあって広場みたいになってます。

旗振山にはお茶屋さんがありました。不定期営業だそう。
ここからの景色が最高でした。
ちなみに鉢伏山からは徒歩1分の距離でした。


旗振山から徒歩9分、鉄拐山に到着。
海と山の距離が近すぎます!素晴らしい景色!

おらが茶屋は土日のみの営業!
登山者に人気のお茶屋さんです。

鉄拐山から徒歩9分、高倉山に到着。
山っぽくはないけど昔は山だったようです。

ここから階段を下って住宅街へ一旦下りることに。
向かいの山まで15分ぐらい歩きます。
途中にスーパーがありましたよ。

山の斜面を歩く人たち。
有名な階段地獄スポットが見えました。

急な階段を400段ほど登るのだとか。
上の方まで行くと高度感もあって少し怖かったです。

栂尾山に到着。
階段地獄は10分ほどで登り切りました。

ここには展望所があって素晴らしい景色が見られました。
景色と言えば掬星台が有名ですが、六甲山系にはこういうスポットがたくさんあるんです。

ここからは花崗岩のザレた道が続きました。

片側斜面のこんなとこだって怖いんだから、馬の背なんて無理に決まってるでしょ・・・(心の声)

栂尾山から徒歩10分、横尾山到着。
ここからまた一気に下って、核心部の馬の背へ。

いよいよ須磨アルプスっぽくなってきました。
鎖で手が茶色になるので手袋をおすすめします。

向かいの山が東山ですね。
ヘビみたいに細い尾根道が湾曲して続いています。

それにしても馬の背付近は大渋滞。
駅前にいた学生さんの団体で賑わっていました。(旗振山で追い越された)

ここから少し下ると

階段が現れます。

足を滑らさないようにしっかり手摺を握って慎重に下ります。
作りはしっかりしてて特に問題なし。ここまではね。

階段の先が細尾根でもないし、景色を楽しむ余裕すらある。ここまではね。

尾根上を歩いたら危険だけど(向こう側は絶壁)、岩をつかみながら進めるから結構楽しいかも。


岩と岩の間をすり抜けて

岩をよじ登ります。
足をかけるところもしっかりあって、ロックガーデンみたいに楽しく登れました。高度感もないからここも問題なし。

名勝馬の背に到着!
YouTubeとか見てて知ってたけどね、ここまでは来れるって。
問題はこの先…

ここから先20mは両側が切れ落ちてます。
右側に落ちたらケガで済むかもしれないけど、左側に落ちたら命の保証はないかも・・・

夫は無事に真ん中付近の岩場まで渡ることができました。
手前はまだ道幅が広くて問題は無さそうかな?
この先はもっと細くなってるらしいです・・・(年々風化が進んで細くなっていってるらしい)
ではチャレンジ!

本当に掴むところが何もないし、左側が切れ落ちててヤバいです。
少し坂になっていて、乾いた花崗岩がめちゃくちゃ滑ります。

あかーーーん!渡ろうとするけど、ここから先足がすくんで進めません(怖)
後ろから来たおじいさんに道を譲って気を取り直します。
おじいさんは躊躇することなく平然と歩いていき夫の横で立ち止まってこちらを眺めていました。
そこへ、杖をついたおばあさんがやってきました。(夫は自分が邪魔になると思って一旦こちらに戻ってきました)
おばあさんは「大丈夫よ~ゆっくり進めば怖くないから~見ててごらん~」と優しく言ってひょこひょこと杖をつきながらゆっくりと歩いていきました。めちゃくちゃドキドキしました。
よし!行くぞー!
おばあさんが行けるなら自分にだってできる!と信じて一歩を踏み出すものの、やはり硬直してしまいました・・・。2度目のチャレンジも失敗。
「僕も高所恐怖症で・・・怖いですよね・・・」と青年が現れました。
私とまるっきり同じ場所で「こえーーー」と言って立ち止まりましたが、お尻を地面につけて滑るように進んでいき、平坦になったところで立ち上がって、あれよあれよと渡っていきました。凄いよ!青年!ブラボーーー!
なるほど!お尻を付けて進めば怖くないかも!と青年を真似てチャレンジしましたが、これも失敗。
次に、犬を抱っこしたお母さんと3歳ぐらいの男の子、お父さんがやってきました。男の子は怖さのあまり泣きだして、馬の背に寝転がって嫌だ嫌だと泣きわめいています・・・(トラウマになるに違いない)
これは危ないと感じて、お父さんが泣いた男の子を抱き上げてこちら側に一旦引き返してきました。見てるこっちがハラハラしておしっこちびりそうでした。

ここまで進んだら、右足が前に出せなくなるんです。おそらく、右足を出そうとすると身体の重心が左に傾くから。
夫は、体は真っすぐに保ったまま右足だけを前に出せと言うのだけど、左側の絶壁に吸い込まれそうな気がして恐怖で体が固まってしまいます。そして、右足を出そうとするたびに私の体が左に傾くことが、後ろから見守る夫にとっても恐怖だったそうです。
もしここを通れても、この先のもっと細くなったところは進めなかったかもしれません。掴むものが何もない細い尾根道は、恐怖以外のなにものでもなかったです・・・。

というわけで、栂尾山まで戻って離宮公園へと下り「月見山駅」から帰路につきました。予定通りの撤退・・・。
撤退の決断|何がキッカケ?
なんとなんと、撤退を決めたのは私ではなく夫でした!
老人・青年・親子連れ・その他、私の目の前を多くの人が通り過ぎていきました。

もうちょっと待って!落ち着いたら行けると思うから!
ここまで誰一人撤退した人はいません。
「みんなが行けるなら自分にも行けるはず!」と思って最後まであきらめず何度もチャレンジしましたが、足がすくんで一歩も前に踏み出せなくなる私の姿を後ろから見ていて、夫が「無理や、撤退しよう」と一言。

お前にはやっぱり無理や。
無理は禁物、撤退しよう・・・
え!?撤退していいの?ほんま???
「その言葉を待ってました!」というわけではないんですけど、正直ホッとしました(笑)
もともと無理を承知でここまで来たし、撤退は覚悟の上だったのですが。
なぜか「渡れるかも?」「ここまで来たから渡りたい」という気持ちに支配されて、自分から「無理」という言葉は発しませんでした。
夫はというと、固まる嫁を眺めながら頭の中で自問自答を繰り返していたそうです。「もし滑落してしまったら?」「もし死んでしまったら?」最悪な事態を想像して「大事になってから後悔しても遅い」と感じたそうですよ。
撤退から学んだ事|安全に登山を楽しむ

馬の背を撤退した【恐怖の話】は娘にとっても少し衝撃だったようで
「別に登山するのはいいけど、山で死ぬのだけはやめて」
と言われました。
週末ごとに夫婦で山に出かけていますが、改めて、無理はしないでおこうと誓いましたね。
多少の無理をしてその先に大きな達成感と喜びがあったとしても、命と引き換えに手に入れたいとは思いません。とはいえ、登山に危険はつきもの。「山に慣れない・舐めない」というのは常に意識しています。
馬の背撤退を経験して「安全に登山を楽しむ」という私たち夫婦のモットーが誕生しました。
最後に(温泉情報アリ)

約1年半前に8回目の登山で経験した話ですが、あの恐怖は今でも鮮明に覚えています。
東山方面から歩いてくる人達もいるので、引き返す道中ですれ違う人たちに「撤退した」とバレなかったのが救いでした(笑)
同じ高所恐怖症でも、青年のように渡っていける人もいます。
無理だろうと思ってはいても、実際に行ってみて目の前であの景色が見れたのはいい経験だったし後悔はしていません。
なので、もし行こうか悩んでいる人がいたら、「見に行く」ことはおすすめします!行ってみてダメなら引き返せばいいだけです!
板宿駅周辺の銭湯・温泉

板宿駅へと下山して「天然温泉あぐろの湯」で汗を流してから帰る予定でした。ゴールを妙法寺駅ではなく板宿駅を設定する人が多いのは、銭湯や温泉に入るためだと思われます。
あさぎり湯、菊水温泉も登山者に人気ですよ。