登山における三種の神器とは「ザック・登山靴・雨具」の事を指しますが、「雨具」とは具体的には「レインウェア」の事を指しています。
ザック・登山靴は理解できますが、なぜこの中にレインウェアが含まれているのでしょうか?
ここが理解できていないと
「雨の日は登山しないから必要ないよね」
「折り畳み傘があればなんとかなるんじゃない?」
といった思考に陥りがちです。
ザックや登山靴と同じで、活動スタイルによって選ぶべきレインウェアも変わってきます。
梅雨を迎える前に、今一度「雨具の必要性と選び方」について確認しておきましょう。
後半ではおすすめの商品をご紹介していきます。ぜひ参考にしてくださいね。
命の危険|低体温症とは?
登山での服装は「綿素材を避ける」「吸湿速乾性」といった素材選びが重要視されていて、それと同時にレイヤリングが基本とされています。
これは、汗が原因で起こる低体温症のリスクを減らすためです。
低体温症とは、深部体温(脳や内臓など体の中心部の温度)が35度を下回ることにより、体の機能を正常に維持できなくなる状態のこと。
深部体温が32~35度の場合は軽症
28~32度では中等症
20~28度になると重症
中等症以上では死亡率が40%にのぼる
登山では「体を冷やさない」ことが重要で、汗で衣服が濡れる事でさえ「命に関わる問題」だという事ですね。
このことから、最も低体温症を起こしやすく危険な状況は「雨に濡れる」ということ。最悪の場合、命を落とす事にもなるのです。
2009年7月、8名の死者を出す山岳遭難事故が発生したのも、天候不良による低体温症が原因でした。
私自身、徳島遠征の時に突然の雨に見舞われ、剣山山頂で全身ずぶ濡れになるほどの暴風雨に遭遇しました。
1時間で下山できたので低体温症はなんとか免れましたが、もう少し時間がかかっていたらどうなっていたかわかりません。
風の強い稜線上では傘が「何の役にも立たない」という事を体験しました…
晴雨兼用の折り畳み傘は、夏の稜線上では紫外線対策に重宝します。
また、風のない時や山の麓では傘の方が使い勝手が良かったりもしますよ。
折り畳み傘はNG!
というわけではなく、天候や場所によって使い分けるのがポイントです。
山の天気は変わりやすいってホント?
季節を問わず山の天候は本当に変わりやすいです!
家を出る前に天気は必ずチェックしますが、登り始めは快晴だったのに途中で雨に降られた!なんて経験は、一度や二度ではありません。
山での天候の変化、その原因は風にあるようです。
平地に吹く風は山にぶつかると斜面を駆け上がり「上昇気流」が発生します。この時空気中に水蒸気が多いと雲が発生して雨を降らせるのだそう。
山の両側で雲の多さが違ったり、下山すると晴れるっていうのは登山あるあるですよね
「雨に対する備え」が重要
山へ出かける前にみなさん天気予報はチェックされるかと思うのですが、一般的な天気予報はそのエリアでのおおまかな情報なので、山の天気となるとあまりアテにはなりません。
そこで「てんきとくらす」や「山の天気」「登山ナビ」といった、山に特化した天気情報アプリ(サイト)を登山者は積極的に活用するわけですが
これらの情報もあくまで「予報」なので、100%信用できるものではありません。
ABC判定がわかりやすい!と大人気のアプリ「てんきとくらす」ですが、登山指数は外れがち、風の数値はわりと信頼できる、という噂です。
山の地形・標高・風向き・風速など、複雑な要素が絡み合う山のお天気というのは、専門家であってもなかなか予想が難しいという事です。
雨が降っていなくても備えておく必要がある
というのが、レインウェアが必要不可欠である理由なのです。
登山用レインウェア|選び方・注意点
雨に濡れなければいいの?
もしもの時の備えなら安いものでもいい?
そうではありません。
登山用のレインウェアは、服装と同じように素材がとても重要なのです。どういったレインウェアを選べばいいのか、具体的にみていきましょう。
ポンチョはNG!セパレートタイプを選びましょう
NG!
登山で使用するレインウェアは、ジャケットとズボンに分かれたセパレートタイプを選びましょう。
大きめの作りをしたポンチョは、ザックの上からさっと羽織る事ができるので突然の雨には最適のように感じますが、足元がカバーできなかったり、風によってポンチョがあおられてしまい木や枝に引っかけてしまう恐れがあります。
ポンチョをすでに持っていてハイキングや里山などに持参する分にはOKですが、登山用雨具として今からポンチョを購入するのは現実的ではないのでやめておきましょう。
素材をチェック|防水性・耐水性
防水性・耐水性は、生地の外側から水が浸み込むのを軽減する機能のことです。
レインウェアの防水性・耐水性の指標は「耐水圧」として表記されていて、耐水圧が高いほど防水性・耐水性に優れたレインウェアとなります。
基本的に耐水圧2,000~3,000mm程度であれば「雨が降っても問題ない」とされていますが、スポーツなどの野外活動で10,000mm以上、登山など激しい雨にうたれる可能性がある場合では20,000mm以上が必要だと言われています。
防水性・耐水性は最も重要な機能のため、しっかりと確認して選ぶようにしましょう。
素材をチェック|防風性
防風性とは、生地が風を通しにくくする性能のことです。
森林限界を超えた稜線上では風を遮るものは何もありません。
登山で着用するレインウェアは、ウェア内部の温度の低下を抑える為に防風性に優れたものを選ぶようにしましょう。
防寒対策としての役割もあるため、秋冬用のレインウェアを選ぶときも防風性はしっかりとチェックしておきましょう。
素材をチェック|撥水性
撥水性とは、水を弾く性質のことです。
撥水:水をはじくこと
防水:水が流入したりしみ込んで機能を損なったりしないよう手当てをすること
よく似た言葉に防水というのがありますが
防水は「水がしみ込まない(水を弾くかどうかは関係ない)」
撥水は「水を弾く(水がしみ込まないわけではない)」
という事を覚えておきましょう。
撥水性=防水ではない
防水=撥水性ではない
撥水性に優れた生地は、生地の表面で水滴が転がるように落ちていくため生地そのものが濡れにくくなり、レインウェアの内部を快適に保つことにつながります。
ただし、撥水性は人工的にコーティング処理した物なので次第にその効果は低下していきます。定期的にメンテナンスを行い撥水性を保つようにしましょう。
素材をチェック|透湿性
透湿性とは、水滴になる前の蒸気状態の水分を生地の外に逃がす性質のことです。
レインウェアを選ぶときには、外側からの水の浸入を軽減するだけではなく「内側の水蒸気を外に逃がして蒸れやべたつきを抑える」ことも重要なポイントです。
レインウェアの透湿性の指標は「透湿度」として表記されています。
この透湿度は「24時間に何グラムの水分を外にだすのか」というのを数値で表したもので、例えば透湿度が10,000g/㎡/24hなら、24時間で1平方メートルあたり10,000gの水分を外に出せるということになります。
登山で使用するレインウェアは10,000g/㎡/24hが理想と言われていますよ。
レインウェアの中でも特に優れた防水透湿性を誇るのが、ゴアテックスと呼ばれる素材を使った商品です。他のメーカーの性能と比較してみると、ゴアテックス素材の機能性がよく分かります。
<ゴアテックス>
耐水圧…45,000mm以上
透湿性…13,500/㎡・24h
<ドライマスターX>
耐水圧…20,000mm以上
透湿性…10,000g/㎡・24h
<ベルグテックEX>
耐水圧…30,000mm以上
透湿性…16,000g/㎡・24h
透湿防水素材はフィルム状になっていて、このフィルム状に1c㎡あたり数億個の微細な穴が空いているので、分子の小さな蒸気だけを通すことができます。
意外と重要|視認性の高い色を選ぶ
レインウェアは天候不良の時に着ることが多いので、薄暗い山の中・霧がかかった視界不明瞭な場所でも見えやすい、視認性の高い色が良しとされています。
具体的には、赤・青・黄色の信号色。
視認性の高いウェアは遭難した時にも発見されやすいと言われています。
仕様をチェック|ポケットの位置・袖口・フードの形など
ポケットの位置や袖口・ファスナーなどの仕様は人によって好みが分かれるところだと思います。
ブランドによって袖の長さや胴回りのサイズが違ったりもするので、購入の際は試着をするのがおすすめ。
寒いときは中にフリースやダウンを着ることもあるので、サイズはひと回り大きめの物を選ぶと良いでしょう。
重量をチェック|性能か軽量か
UL(ウルトラライト)という装備軽量化に注目されていますが、一般的に軽量の物は安価な物が多く、性能がそこまでよくなかったりもします。
反対に、性能が良い物は使われている素材がしっかりしているので重量が重いというデメリットも。
素材や機能性をチェックしたうえで、重量は最後にチェックしたいポイントかなと思います。似たような性能であれば軽い方がいいですもんね。
常に持ち歩く物なので、小さくコンパクトにしまえるものがおすすめです。
レインウェアをアウターとして兼用する
登山用品は高額な物も多いので、あれもこれもと選んでいたらかなりの出費になりますよね。
「兼用できるものは兼用したい」「できるだけ物を減らしたい」というのが多くの登山者の本音ではないでしょうか。
防寒性のあるレインジャケットは春秋にはソフトシェルとして活用することができます。
登山を始めるときにはザックや登山靴など購入品も多いでしょうから、ソフトシェルとして使えそうなデザインや機能性で選ぶといいですよ。
おすすめ!コスパ最強のレインウェアはモンベルに決定!
モンベルは「性能の良い商品を他メーカーと比べてお手頃価格で購入できる」という点で登山者から絶大な人気を誇っています。コスパが最強なんですよね。
登山初心者であれば「モンベルのレインウェアを購入すれば間違いがない」と言い切れるでしょう。
ただ・・・人気なだけあって、人と被ってしまうのが残念なところ。。。
ノースフェイスやカリマー・ミレー・マムートなど、他メーカーで探すときの参考材料にもなると思うので、ぜひモンベル商品の機能性・価格帯などをチェックしてみてくださいね。
おすすめのレインウェア|登山初心者・日帰り登山向け
「雨の日は登山しない」日帰り登山と、山小屋で1泊以上する宿泊登山では、選ぶレインウェアが変わってきます。
なぜなら、雨に降られる確率が宿泊登山では跳ね上がるからです。
ここではそれぞれの山行スタイルでどういったレインウェアが活動に適しているのかといった視点でおすすめのレインウェアを紹介します。
まずは登山初心者向き、日帰り登山向きのレインウェアです。
素材はゴアテックスインフィニアムが使用されていて「完全防水」ではありません。そのかわりに、シームテープを省いた分軽量で、しなやかな着心地が特徴です。
突然の雨に対応できるだけの防水性は兼ね備えているので、雨の日に活動はしないという日帰り登山に向いています。
モンベル|レイントレッカー ジャケット Women's
【商品情報】
優れた防風透湿性を誇る「ゴアテックス インフィニアム™ ウインドストッパー® ファブリクス(防水仕様)」を使用。
薄く柔らかい素材を使用することで軽量コンパクト性に優れ、柔らかな着心地を実現。
【素材】ゴアテックス インフィニアム™ ウインドストッパー® ファブリクス(防水仕様)
耐水圧30,000mm以上、透湿性43,000g/m²・24hrs (JIS L-1099B-1法)(参考値)
【重量】188g
【カラー】ブラック(BK)、ブルー(CNBL)、イエロー(MST)、ダークグリーン(PIGN)
【サイズ】S、M、L、XL
【収納サイズ】7×7×13cm
【値段】¥17,600(税込)
モンベル|レイントレッカー パンツ Women's
【商品情報】
優れた防風透湿性を誇る「ゴアテックス インフィニアム™ ウインドストッパー® ファブリクス(防水仕様)」を使用。
薄く柔らかい素材を使用することで軽量コンパクト性に優れ、柔らかな着心地を実現。ジッパーで膝位置まで開くことができ、靴を履いたままでもパンツの着脱が可能です。
【素材】ゴアテックス インフィニアム™ ウインドストッパー® ファブリクス(防水仕様)
耐水圧30,000mm以上、透湿性43,000g/m²・24hrs (JIS L-1099B-1法)(参考値)
【重量】138g
【カラー】ブラック(BK)
【サイズ】XS、S、M、L、XL、M-S(ショート)、L-S(ショート)、XL-S(ショート)、XXL-S(ショート)、S-L(ロング)、M-L(ロング)、L-L(ロング)
【収納サイズ】6×6×10cm
【価格】¥11,880(税込)
おすすめのレインウェア|宿泊登山向け
テント泊や山小屋泊をする場合、翌日に天候が急変する事態は珍しいことではありません。
その為、より防水性の高いゴアテックス素材がおすすめになってきます。
モンベル|ストームクルーザー ジャケット Women's
【商品情報】
防水性・透湿性・軽量性を備えた究極のレインウェア。
縫製箇所を極限まで減らす独自のパターンと、しなやかな着心地を生み出すGORE® C-ニット™バッカーテクノロジーにより、かつてない着心地のよさを実現。
【素材】ゴアテックス ファブリクス3レイヤー
耐水圧50,000mm以上、透湿性35,000g/m²・24hrs(JIS L-1099B-1法)(参考値)
【重量】227g
【カラー】ピンク(CLART)、コーラルピンク(COPK)、ネイビー(DKNV)、ターコイズ(LTTQ)、イエロー(MST)
【サイズ】XS、S、M、L、XL
【収納サイズ】7×7×14cm
【値段】¥25,300(税込)
モンベル|ストームクルーザー フルジップパンツ Women's
【商品情報】
サイドが全開し登山靴などを履いたままでも簡単に着脱できるレインパンツ。
「ストームクルーザー」と同じ、GORE® C-ニット™バッカーテクノロジーを採用し、大幅な軽量化と同時に、これまでにない柔らかな着心地を実現。※ジッパーは下からのみ開けることができます。
【素材】ゴアテックスファブリクス3レイヤー
耐水圧50,000mm以上、透湿性35,000g/m²・24hrs (JIS L-1099B-1法)(参考値)
【重量】200g
【カラー】グレー(SHAD)
【サイズ】XS、S、M、L、XL、M-S(ショート)、L-S(ショート)、XL-S(ショート)、XXL-S(ショート)、S-L(ロング)、M-L(ロング)、L-L(ロング)
【収納サイズ】7×7×13cm
【値段】¥19,250(税込)
ミレー|ティフォン50000ストレッチジャケットWomen's
ミレーのティフォン50000ストレッチジャケットは、しなやかな素材の着心地の良さと高い透湿性が人気です。
この透湿性は他メーカーでなかなか見ないほどの数値で、夏場でも蒸れないという口コミが多いです。冬はウォームジャケットがおすすめです。
【商品情報】
高い防水透湿性と快適な着心地を両立した高透湿防水ジャケット。
独自に開発された7ミクロンの極薄メンブレンDRYEDGE™ TYPHON 50000は、登山向けとしても十分に高い耐水圧(20,000mm)と、50,000g/㎡/24hという最高度の透湿性を両立し、あらゆる天候で衣服内を常にドライに保ちます。
裏地には15Dのニット素材が配置され、シルクタッチの肌触りは驚くほどしなやか。さらに適度なストレッチ性を備えアクティブな動きのなかでも常に自然な着心地を実現します。細身のすっきりとしたシルエットに加えて豊富なカラーバリエーションも魅力です。(参考:ミレー公式HP)
【素材】DRYEDGE™ TYPHON 50000 3L KNITTED BACK ナイロン100%
耐水圧20,000mm、透湿性50,000g/㎡/24h
【重量】262g
【カラー】OLIVE・ROSE BROWN・SAPHIR・CLOUD DANCER・MASTIC
【値段】¥ 31,900 (税込)
ミレー|ティフォン 50000 ストレッチ トレック パンツ
【商品情報】
独自メンブレンDRYEDGE™ TYPHON 50000を採用し、高い防水透湿性を備えた防水トレックパンツ。スリムなストレートのシルエットは、雨がやんだ時でも違和感なく着ることができます。
50,000g/㎡/24hという高い透湿性と裏地のしなやかな15Dニット素材によって、天候に関わらず衣服内を常に快適に保ちます。
スムーズな足上げを可能にする立体裁断と適度なストレッチ性を備えているため、足上げ時の余分なツッパリ感を軽減。フロント両サイドにはベンチレーション機能を有したメッシュポケット、バックにはジップポケットを配置し、トレッキングパンツとしての利便性も十分です。 携帯時はポケットに収納できるパッカブル仕様で、コンパクトに持ち運べます。(参考:ミレー公式HP))
【素材】DRYEDGE™ TYPHON 50000 3L KNITTED BACK ナイロン100%
透湿性50,000g/㎡/24h
【重量】162g
【価格】21,890 税込
まとめ|個人的感想
雨に備えるためのレインウェアですが、登山用のものはかなり高額ですね。上下揃えるだけで5万円近い出費とは・・・。
できるだけ安く抑えたいな~と思ってしまいますが、防水性や透湿性の大切さがわかるとやはり機能性重視で選びたいところ。
ただ、ここからは個人的な感想を述べさせていただくと
関西の低山をメインで活動していて「撥水性のあるアウターでもある程度はしのげる」という事がわかっているので、なにがなんでも最初に準備すべき!というものでもないのかな?と感じています。(あくまでも山行スタイルによるのですが)
では「何が重要なのか?」というと、「メンテナンス」なんですよね。
撥水性というのはメンテナンスしないと維持できないものです。これはウェアにしてもザックにしても登山靴にしても同様ですね。
機能性重視で選んだから安心!というわけではない、という事は知っておいてほしいかな。
選ぶなら、「お気に入りの一着」を見つけて、大切に長く使ってほしいなと思います。